甲冑 兜 ~その二~
龍頭
欄間師が彫った龍頭。深く細かい彫り、ひげがあります(龍鬢)。
尾のところに剣。三爪で玉を持つ龍頭の様式です。
兜のお話の佳境に入ってきます。特に「龍」にまつわる話はたくさんあって、「へ~!」「ほほう!」の連続です。お楽しみください。
龍頭は 「たつがしら」と読みます。兜の正面、左右の鍬形(くわがた)の間に取り付けます。龍の文様は帝しか用いることができませんでしたので、兜の前にこれがついているということは、帝公認の武士であることを表していたのだと思います。言うまでもなく、龍は想像上ですが最も強い動物です。空も飛べるし海にも潜れます。
また、竜と龍の二つの文字が同じ読み、同じ意味で用いられています。龍の略字が竜なのかと思われていますが、紀元前千数百年から竜の字は使われており、こちらの方が古い文字のようです。この竜にいろいろ装飾が加えられ、龍になったという珍しい漢字です。漢字といいましたが、漢の時代より以前になりますね。
兜の龍も「りゅうず」と呼ぶ人もいますが、一般にりゅうずというと腕時計に付いている小さなネジのことを指します。しかし、このりゅうずという言葉は腕時計が生まれるよりずっと昔からある日本語で、それは、お寺の釣鐘のてっぺんについている、ぶら下げるための金具のことを指す言葉なのです。懐中時計ができたとき、そのネジとお寺の鐘の龍頭の形が似ているのでリュウズと呼ぶようになり、腕時計のネジもこう呼ぶことになったのでしょう。英語みたいですがれっきとした日本語です。なぜ、釣鐘の頭を龍頭と呼ぶようになったかというと、この鐘をぶら下げるためにてっぺんについている「紐(ちゅう)」という金具に、よく蒲牢(ほろう)(※)という龍に似た彫り物がついていたからなのです。
(※)次回は蒲牢のお話。お楽しみに
節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ
これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。
※この記事の無断引用は固くお断りします。