連載 重箱のスミ㊹

ただ今お雛さま売り出し中です!

羽子板、破魔弓飾もどうぞ・・・・

 

御道具揃と掛盤膳揃 ~その一~

 一番楽しいお膳と重箱

 

ご飯がてんこ盛り(専門店でないと求められないお道具です)

どら焼きが2個・・・

 

 三方や菱餅のお話をしたので、お膳類のことにも触れなければなりません。

 一般に雛人形のお道具では「掛盤膳揃(かけばんぜんぞろい)」というと、「三方」、「菱餅」、「高杯(たかつき・丸餅)」、「掛盤膳」のことを指しますが、実際のお料理の場面では掛盤膳揃とは、四本足のお膳と食器のことを指します。掛盤膳は四本の足に四角い枠が取り付けられ、畳を傷めないようになっています。他に、「蝶足膳(ちょうそくぜん)」といって、四角の枠のないギザギザした足のお膳もしばしば用いられます。

 写真のお膳(掛盤膳)は昔から当家で使っているものです。ひな祭りのときは、このお膳に実際にお料理を盛って供え、あとでいただきます。ご飯は画像のようにてんこ盛りに盛って、ちょこんと小さな蓋をのせます。他のお椀には、おかずやお吸い物などをよそいます。重箱(これは30年くらい前に買ったもの)にはお料理でもいいのですが、お菓子を入れています。

 お料理を盛っていないときは、掛盤などはこちらを正面に飾っていますが、お料理を盛ったときには、これはお雛さまに供えるものですので向こうが正面になるように飾ります。もちろん、お箸も添えて。(この掛盤は全体にに牡丹唐草の蒔絵が施されており、前後の区別はありません。)

 お椀の並べ方がよく分からない、という方が多いのですが、基本を知っていればむつかしくありません。

 まず、ご飯。これはふつうに手前の左側です。その右側にお吸い物のお椀です。お椀の見分け方が分かりにくいのですが、まず、ご飯は一番大きなお椀に一番小さなふたがセットです。写真のようにご飯をてんこ盛りに盛って、小さなふたをちょこんとのせます。お吸い物はお椀の内側にふたが入ります。これは、ふたについた露がお椀の外側にたれないためです。料理屋さんでもお吸い物のふたは必ずお椀の内側にかぶせられています。

 真ん中に足高のふたのない小さな器。これにはお漬物が盛られます。

 奥の二つはおかずです。汁物ではないのでふたは外側になります。この二つは諸説あって左右どちらでもいいと思います。手前の二つ、ご飯とお吸い物がわかれば、あとは簡単なのです。

 お雛さまも手では食べられませんから、お箸を添えてあげましょう。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

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ただ今、お雛さま・羽子板 破魔弓飾り 売り出し中です。

◇可愛いだけではもったいない

◇次の世代に文化としてのお雛さまを伝えられないと申し訳ない

◇伝統を謳いながら伝統様式を守っていないとなさけない

そんな気持ちでお雛さまをおあつらえしています。

ちょっと他のお店様とは品ぞろえが違います。

ちゃんとしたお雛さま、生涯お飾りいただけるお雛さま、

どなたに見ていただいても恥ずかしくないお雛さま、

たくさんお揃えしました。どうぞご覧ください。

 

※この連載は、5月3日から始まっています。一般にネットなどで解説されているようなことにはあまり触れていません。まさに重箱のスミ的な、知っていてもあまり役に立ちませんが、お子様に折に触れお話しいただくとおめめがきらりと光るようなちょっと楽しい(かもしれない)事柄です。

三方と菱餅 ~その四~

菱餅

 

お雛様以外では見かけることのない菱餅。なぜ、菱型で三色?、そしてそれがのせられている菱餅専用としか思えない台。

菱とは植物のヒシから来ているデザインです。ヒシは池や沼によく生えていて、実は古来、食用とされています。忍者の使うマキビシのような形をしていて、トゲがあり、中の実は茹でると栗のような味がします。子供のころ名古屋城のお堀に生えているのを採って食べたことがあります。葉っぱはヒシというより四角い感じで、その茎の元の方がふくらんでいてこの部分も菱形に近いかたちです。

菱型は、この実から来ているのか、葉っぱ、または茎なのかよくわかりません。忍者は実際にヒシの実を乾燥させてマキビシにしていたともいわれています。このトゲトゲに厄除けの意味があります。節分にイワシの頭とともに飾られるヒイラギにもトゲトゲがありますね。

菱餅の三色はクチナシ(紅)とヨモギ(緑)で色付けられます。中には五色や七色もあります。この菱餅が菱形なのは厄除けという意味があるのでしょうが、宮中ではお餅が菱形だからそれが広まったと何かの本で読んだことがあります。ずいぶん前のことで、どんな本だったのか思い出せません。宮内庁におたずねしてみたのですが、ご返答がいただけていません。そもそも、宮中で雛人形を飾るのかどうかさえわかりません。戦後の話ですが、ある女王様(女性皇族)から小さなお雛さまが女官におさげ渡しされたという話がありますので、まったく飾られないというわけではないでしょうが、「上巳の祓え」は行われても「ひな祭り」はなさらないのかもしれません。

この菱餅を載せる台は菱餅専用です。菱形の折敷には中に中板(ゲタ)がはめられ、裾広がりの台とセットになっています。前項の三方の菱形バージョンです。この菱餅台はお雛様以外に実用品としては見たことがありません。宮中では普通に菱形のお餅を召し上がられているとすれば、このような菱台に載せられているのでしょうか。

お雛様専用とすれば、考え出した人はなかなかたいしたもんだなと思います。他の丸いお餅の「高杯(たかつき)」や「お膳」類は実際に食器として存在するものをお雛様用に小さくしたものです。

こう考えると、菱餅はお雛様には欠かせないお道具だと言えます。

これはお餅が五色です。   台は三つの部品で構成されます。

 

 

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お雛さま 揃いました。

お雛さま、羽子板飾、破魔弓飾

そろいました!
   

 

お雛さまは

最初はお子様が健やかに育ってほしいという「祈り」、幼稚園、小学生になると飾ってお祝いする「喜び」、大人になり更にお歳を召されると、それは「誇り」になります。そのために、お雛さまは種類を問わず100年くらいは飾れるようなものでないと申し訳ないと、当店は考えています。

そこで大切なのは、なにをおいても「品(ひん)」です。

「品」とは、つまり「完成度」。それは確かなデッサン(かたち)と色彩の組み合わせです。価格の問題ではなく、その価格帯ごとにもっとも完成度の高いお雛さまを注文し、それに合う雛道具をお揃えします。どんなお雛さまでも、可愛らしくないお雛さまはありません。でも、可愛らしいだけでは少しもったいない。

永くお飾りいただくためには、流行にとらわれない普遍的な完成度、つまり「上品」であることが重要です。

どうぞ、お気軽にご覧ください。

連載 重箱のスミ ㊷

三方と菱餅 ~その三~

 瓶子と口花 ②

 瓶子は胴が太く口が細いので、お酒をそそぐとき「コポコポ」といい音がします。いちどきにどばっと出ることがないようにこのかたちになったのでしょうか、それとも昔のお酒には澱(おり)があったのでそれを避けるためでしょうか。ボルドーワインの張っている肩も、澱を注がないようにそういうかたちになっているそうです。しかし、澱の少ない清酒ができるようになったせいか、酒飲みにはどうでもいいことだったのか、江戸時代には現在のような注ぎやすい徳利になりました。

 お雛さまに用いられるのはほとんどが金属製の瓶子ですが、不思議と端午の節句のお飾りに用いられる瓶子は素焼き製です。端午の節句は雛祭りよりもずっと古い行事なのですが、人形や鎧兜を飾るようになったのは、公家の間で伝えられてきた上巳(じょうし)の節句と違って、近世に武家が中心となって広まったのでそうなったのかもしれません。

 ちなみに端午の節句のときの口花は菖蒲とヨモギです。

 瓶子をデザインした「家紋」(図)があります。ビンのかたちではなく、袋に包まれたデザインです。温めたお酒が冷めないように袋に入れて使っていたとか、ふだんは大切に袋に入れて保管していたためとか言われています。一見、お茶の棗(なつめ)を包む仕覆(しふく)のように見えますね。神社関係の方に多い家紋のようです。

※次回は菱餅のお話です。

 

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三方と菱餅 ~その二~

 瓶子と口花 ①

 三方と言えば、その上に乗っているのが、飾りの花が口に挿してある瓶子(へいし)です。瓶子は銀色の金属製のものが多いのですが、これは錫(すず)の瓶子を表しています。錫は、お茶の伝来とともに茶葉入れとして伝わり、柔らかく、加工が容易なためお酒を入れる容れ物として使われるようになりました。錫は高級品なので一般の瓶子には素焼きの白いものが多く、神社やご家庭の神棚に飾られるものもほとんどが素焼きのものです。中世には木製に漆塗りのものもさかんに作られました。

 中にはお酒を入れ、口花(くちばな)を挿します。口花は一般には熨斗口(のしぐち)とか御神酒口(おみきぐち)と呼ばれ、神社や旧家などではお正月やお節句などおめでたいときに飾られます。

 お雛さまのときに口花として飾られるのは「桃」と「柳」です。上の方の細長く、やや淡い緑の葉っぱは柳で、紅白の花が付いているのが桃です。中国では昔から「桃紅柳緑(とうこうりゅうりょく)」といって、春のもっとも美しいものとして桃と柳が愛でられており、ここからお雛さまにも飾られるようになりました。西城八十作詞、李香蘭が歌って大ヒットした「蘇州夜曲」にも柳と桃が出てきます。NHK朝の連続ドラマ「ブギウギ」にも出てきた服部良一の作曲です。李香蘭は後に山口淑子の名で参院議員にもなりました。

 もう一つ、「桃紅李白薔薇紫(とうこうりはくそうびむらさき)」という言葉が中国の古典「詩格」にあります。この言葉から、画家・篠田桃紅は名付けられたと言います。ここでは桃の紅、スモモの白、バラの紫が美しいものの例えとなっています。この桃紅さんは、「努力で得られるものなどたいしたことはない」と言っています。昨今の、努力すればなんでも叶うという流れとはまったく違います。天賦の才能と努力があれば、多くのことは実現するかもしれません。しかし、どんなに努力してもだれもが大谷選手になれるわけではありません。まず、あの身体がなければ無理なのです。身長が低い女性がどんなに望んでも、スーパーモデルになれないのと同じです。身体だけでなく、だれでも身に備わった能力というものがあります。それは十人十色で、その備わった能力を活かす努力をしなければ大きな成果を得ることはできないということを言いたかったのかもしれません。(もう一つ、深読みですが、たぶん、彼女の途方もない努力をご自分では努力と思っていなかったフシがあります。書や絵が好きで好きで、そのための努力は努力ではないと思っていたのでしょう。)

 口花に桃と柳が表現されているものは少なく、桃というより赤い梅のようなものだけのことがほとんどです。お雛さまを飾る意味合いとしては重要な部分なのですが、あまり顧(かえり)みられません。最近は口花でさえなく、なにかよくわからないものが置かれていることが多くなりました。「伝統的な」とか、「有職」、「様式」を謳うならば見逃すことのできない部分なのですが。

 ほんとに重箱のスミ的なことがらです。

画像ではわかりにくいのですが、薄緑の細長い柳と、濃緑で丸みのある桃の

二種類の葉が表現されています。

 

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三方と菱餅  ~その一~

 三方(さんぽう)

 三方や菱餅も同様で、本来、それはお子様のお守りであるお雛さまへの感謝や祈りのお供えを載せるための道具です。

 お正月にお寿司屋さんに行ったところ、お鏡餅を飾ってある三方の台の部分が上下さかさま、折敷(おしき=上部の皿部分)が前後逆に飾ってありました。お断りして直させていただきましたが、お雛さまの三方を見慣れていれば、こうしたこともなかったかもしれません。

 屏風は紙の部分を持てば破れることや、三方の上下前後など、大人になって知らないと恥ずかしい知識がお節句の飾りにはたくさんあります。特に、畳のお部屋のないマンション等にお住まいの方こそ、伝統的な様式を備えたお雛さまを飾ってほしいと思います。

 三方は下の台の部分と上の折敷というお盆のような部分でできています。大抵、この二つはくっついていますが、別々になっているものもあります。台の部分には三方向に宝珠型に穴がくり抜いてあります。これが三か所なので三方(三宝)と呼ばれます。四方にあいたものもかつてはあったようで、四方と呼ばれていました。三方の台は穴のあいていない面に繋ぎ目があり、つなぎ目が向こう側で、穴の開いた面を手前に飾ります。逆に折敷はつなぎ目がある方が手前になります。神社などでも神様がおられる側が正面ですので、こちらに向いている方が裏面ということになります。

三方の手前側          三方の向こう側

折敷のつなぎ目は桜の樹皮でつないであります

 

 

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屏風をほじくる その三

屏風の上下

 

ちゃんと表具された屏風には上下があります。

金屏風など、絵柄のない屏風ですと上下がないように見えます。

そんなとき、屏風の角を見て下さい。写真のようにたての棒と横の棒が45度で突合せになっている方が上です。下は90度に切られた棒が組まれています。棒と言いましたが、正しくは縁(ふち)といって、このように塗られているものを塗縁(ぬりぶち)とよんでいます。角は傷つきやすいのでこのように金具がつけられていることが多いです。

金具がつけられているということは、こうした屏風は塗装されている台などに載せることは想定されていないことを表しています。金具があると、台に傷がつきます。つまり、お雛さまの屏風は「もうせん」の上に飾ることを最初から想定して作られているのです。

もうせん(フェルト)は北アジアでは紀元前から作られており、正倉院にも収納されています。羊毛などで作られており、不織布の代表的なものです。

中でも赤い緋毛氈(ひもうせん)は清浄な区域を表すとされ、西欧で用いられるレッドカーペットにもその意識を見ることができます。

屏風の上下を知っていても普段の生活に役に立つことはありませんが、ちょっとだけ豊かな気持ちになることはあります。

 

屏風の上:45°      屏風の下:90°

 

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Schie 五節句展へどうぞ!

今年も東山荘さんで「五節句展」開催します。
人形作家だけでなく、絵描きさん、陶芸家さん、和凧職人さん、三方職人さん、押絵作家さん、さらに今年は和菓子作家さんも加わり、にぎやかに開催します。
国の有形文化財の建物・お庭をお借りして、日本の節句文化の楽しさを感じていただければ幸いです。
「節句」という一本の糸でつながったさまざまな工芸、文化をお楽しみください。4日、5日にはお呈茶もございます。
期間 : 10月4、5,6日
     4日は午後から、6日は午前中のみ
場所 : 有形文化財「東山荘」
     瑞穂区初日町2丁目3番地
ご観覧無料
お呈茶は1500円
お問合せは 大西人形本店へ
   電話 052-231-4104

連載 重箱のスミ ㊳

屏風をほじくる その二

様式美と屏風

 雪洞の問題にも触れましたが、メーカーや問屋では設定したスペースいっぱいに人形(お雛さま)本体を置こうとするので、自然と雪洞や桜橘、雛道具などを置くスペースが削られています。本来、どれも省いて良いものではありません。三曲の屏風を使うと、左右に袖部分が出っ張りますのでどうしても火袋のふくらんだ雪洞を置くことが難しくなります。そこで妙に細長い雪洞にしたり、「なくてもいいんじゃない?」とばかりに、屏風に小さなLED灯を仕込んだりして雪洞が次第に姿を消しつつあります。

 また、ネットでの検索が一般化されてきたことにより、多くの人形製作者が雪洞や雛道具を略し、それがいかにもおしゃれのように掲載することで、同じ金額の雛飾りならば人形本体の占める割合を大きくしようとする動きにも一因があります。

 お雛さまの美しさとは、周囲の道具類も含んだ歴史や伝統に裏打ちされた「様式美」です。伝統にとらわれないものを一概に否定はしませんが、問題はそれが一部の商品でなく大勢を占めつつあり、逆に様式に則ったお雛さまが少数派になってしまったことです。様式を無視した雛人形がふえれば、その次に来るのは雛人形・ひな祭りの消滅です。様式を備えない雛人形は、様式によって支えられているひな祭りそのものの意味を欠くことになるので、どうしてもおもちゃやベビー用品的なお飾りになってしまいます。大人になっても、おばあちゃんになってもお祝いするひな祭り。そのひな祭りをするためのしつらえであることを忘れた雛人形は、ただの面倒くさい飾りものになりかねません。

※次回は屏風の上下について。乞う、ご期待

 

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「屏風」をほじくる  その一

  六曲一双屏風

[ 屏風 ]  基本的な構造は、矩形の木枠の骨格に用紙または用布を貼ったもので、この細長いパネルを一扇といい、それに向かって右から第一扇、第二扇と数える。これを接続したものが屏風の一単位、一隻(一畳、一帖)である。:wikipediaより

 お雛さまの屏風の基本は一本が六つの面(扇)でできており、折りたたむことができるようになったものが二本(二隻)一組になったものです。先の鳥毛立女屏風もこの六曲であったように、また、現代でも結婚式で新郎新婦の後ろに立てられる金屏風がそうであるように、それが基本なのです。(写真)

 作りは、障子のような骨が組まれた下地に裏表両面から紙を貼り重ね、つなぎ目は「紙蝶番(かみちょうばん)」という独特な技法で自在に三百六十度曲げることができるようになっています。当然、中は空洞です。紙の部分を強く持つと破れます。

 童謡「うれしいひなまつり」では「金の屏風にうつる灯を~」とありますが、金だけではなく絵が描かれたものもよく用いられます。お雛様の背後に屏風の縦の折り目ラインが何本も入りますので、荘厳さが増すように感じます。そして、見逃せないのは、三曲の屏風と違って左右に大きな袖がないので、雪洞(ぼんぼり)を置くのに不自由がない点です。

 今では飾る場所のスペースの問題もあって三曲の屏風が主流になってしまいましたが、どうしても簡略化の印象はぬぐえません。そして、今一つの問題は、この三曲屏風の多くがつなぎ目を金属のチョウツガイで木ネジで留めて作られていることです。つまり、屏風なのに、表具がされていないのです。合板(ベニヤ)やボード(MDF)に花柄や風景を印刷したり、布や木目シートを貼りつけてできています。表具師ではなく、木工屋さんで主に作られます。表具、表装という伝統的な技術職の職人が激減していく原因のひとつにもなっています。合板やボードの屏風があってもいいのですが、基本となる表具をされた屏風を人形販売店が極端に扱わなくなってしまったことが大きな原因といってもいいでしょう。

 親王台のところでも触れましたが、SDG’s的(環境)にも大きな問題があります。屏風や台でよく用いられる「木製のような板」のほとんどは「合板」か「ボード」の「木質材」といわれるもので、木材のシートやチップを接着剤で圧縮成形したものですから、廃棄しても簡単に自然に戻らず、焼却するのもガスなどの問題で容易ではありません。海洋汚染の原因のひとつにも指摘されています。きれいな木目の、一見、木製のような材料もほとんどが合板やボードに木目シートを貼り付けたもので、販売店自身も「木製」と信じて販売していることが一層の環境悪化に加担している結果になってしまっています。実際、そうした製品の多くに「木製品」の表示がなされています。家具や食器などではありえない表示です。(残念ながら、現在のところ雛人形などにきちんとした素材表示義務はありません。)

 そして、こうした商品がふえることで従来の「表具師」がこしらえる屏風が消えていくことに私たちは注目しなければなりません。

 

六曲の屏風。              屏風の骨組み。これに和紙を貼り重ねます。

これは絵師が源氏物語を描いています。

 

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