三方と菱餅 ~その三~
瓶子と口花 ②
瓶子は胴が太く口が細いので、お酒をそそぐとき「コポコポ」といい音がします。いちどきにどばっと出ることがないようにこのかたちになったのでしょうか、それとも昔のお酒には澱(おり)があったのでそれを避けるためでしょうか。ボルドーワインの張っている肩も、澱を注がないようにそういうかたちになっているそうです。しかし、澱の少ない清酒ができるようになったせいか、酒飲みにはどうでもいいことだったのか、江戸時代には現在のような注ぎやすい徳利になりました。
お雛さまに用いられるのはほとんどが金属製の瓶子ですが、不思議と端午の節句のお飾りに用いられる瓶子は素焼き製です。端午の節句は雛祭りよりもずっと古い行事なのですが、人形や鎧兜を飾るようになったのは、公家の間で伝えられてきた上巳(じょうし)の節句と違って、近世に武家が中心となって広まったのでそうなったのかもしれません。
ちなみに端午の節句のときの口花は菖蒲とヨモギです。
瓶子をデザインした「家紋」(図)があります。ビンのかたちではなく、袋に包まれたデザインです。温めたお酒が冷めないように袋に入れて使っていたとか、ふだんは大切に袋に入れて保管していたためとか言われています。一見、お茶の棗(なつめ)を包む仕覆(しふく)のように見えますね。神社関係の方に多い家紋のようです。
※次回は菱餅のお話です。
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