旗が何本も立っています。これが「座敷幟(ざしきのぼり)」です。
今年もご用命をいただき仕立てることができましたが、来年はわかりません。伝統とか文化とか言われて久しいのですが、このようにまさに風前のともしびという物が私たちの仕事のまわりにはたくさんあります。恐らく、木造建築とか指物、漆器、呉服など伝統的と思われている業種はすべて同じような状況にあると思います。
この座敷幟には欄間職人の彫る木彫が指物師のつくる木枠にふんだんに組みこまれ、そこに絵の描かれた縮緬や塩瀬の裂地の旗、シャグマとよばれる白い毛の毛槍や金箔押の千成瓢箪(せんなりびょうたん)などの旗指物・上物(うわもの)が立てられます。それぞれ別々の職人がこしらえたものをまとめるのですが、そうした知識や技術を備えた人形屋がほとんどいなくなってしまい、自然とそうした品に触れることがなくなり、お求めになるお客様もいなくなってしまうことでこうした品は絶滅することになります。
この写真の大人の顔の武者人形、両脇の弓と太刀はすでに作られなくなってしまった品物です。桐塑に奉書紙の毛並みの白馬は、作者がご高齢のため数年中にはできなくなります。雌桑の縁の遠山柄の屏風は作っていただける表具屋さんは一軒しかありません。下に敷いてある緑のウールのフェルト毛氈でさえ、国内メーカーは1社になりました。どの職人、どの下職さんがいなくなっても同じようなしつらえをお揃えすることはできなくなります。
職人さんに仕事を続けてもらうには、わたしたちが「注文する」しか方法はありません。この世からこうした「仕事」がなくなるかどうか、それを見届けたくないためにがんばってご紹介をし続けています。