連載 五月人形の重箱のスミ 62

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神天鍾馗 ~その二~

  鍾馗(しょうき)

鍾馗さま

当店でご覧いただけます

 

 また、鍾馗は、中国・唐の六代玄宗(げんそう)皇帝の夢に出てきて悪鬼を退治したことから魔除けとしてその姿を絵に描いたり、人形にするようになりました。鬼瓦にもよく用いられます。この鍾馗さん、官吏になるための科挙の試験を受けますがどうしても受からない。それを恥じて自殺してしまうのですが、当時の初代皇帝高祖が憐れんで手厚く葬ってくれたのを恩義に感じて玄宗皇帝の夢の中の悪鬼退治に現れたのです。日本でも江戸時代には魔除けとして絵によく描かれ、赤い絵具で描かれたものは特に疫病除けとして売れたそうです。コロナにも効くかもしれません。かつては赤鍾馗といって、赤い鍾馗人形もよく作られました。

 鍾馗さんは悪鬼を退治するのですから怖くないといけません。見ただけで子供が泣きだすくらいでないと意味がありません。現代中国でもこの方は有名で「ジョンクィ」と呼びます。鍾馗にも様式があり、手には諸刃の剣、独特の冠をかぶり、ヒゲ面です。帯のバックルにあたるところは獅子頭です。

 神天鍾馗には、こうした「様式」が求められることと、「こわい」ことなどから、最近は求められる方も少なくなってしまいました。作る人が少なくなると、持ち物(剣や冠、弓など)をこしらえる職人もいなくなり、今ではちゃんとした神天鍾馗は作ることがかなりむつかしい人形になってしまいました。

 この二人は厄除け、お守りとしての節句のしつらえのお人形の中ではもっとも格の高いものといえます。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

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