男雛の装束の、立てば膝辺りにくる衣の裾部分、襴(らん)といいます。歩きやすいように左右に蟻先(ありさき)というゆとりを持たせています。衣の上部は裂地(きじ)を縦に使っていますが、この部分は横に長いので裂地を横向きに使います。そこで、この白い方はよく見ると柄が横向きになっています。一方、黒い方は同じような柄ですが、上部と同じ柄が縦に揃っています。
実際の装束だと、この襴のためにわざわざ柄の向きを90度変えて織るというとても面倒なことをしていますが、人形の場合だと横に裁断しても仕立が可能ですので、現在はほとんどが柄の向きを合わせています。どちらが良い、という話ではありませんが、2~30年前までは多くの男雛の装束は白の方のように柄が横向きでした。