連載 五月人形の重箱のスミ 73

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甲冑 兜 ~その十~

 唐獅子(からじし) ①

兜の唐獅子

 エンゼルス時代の大谷選手の兜には龍頭(たつがしら)ではなく、唐獅子(からじし)がついていました。かつてはお節句の飾りには唐獅子のついた兜も多く、龍と半々くらいでしたが今では唐獅子の前立(まえだて)はほとんど見ることがなくなりました。原因は、木彫りの龍が海外で安く大量に作られるようになり、多くの業者がそれに依存することで唐獅子を作る国内の職人がいなくなってしまったのです。愚かなことでした。大谷選手の兜を作った九州のメーカーにはたくさんの問い合わせがあったようです。節句用の鎧兜というより、映画撮影やお祭りなどの用途に特化した甲冑メーカーさんなので私たちの扱うお節句用の兜の作りとはちょっと違います。少し前に「着用兜」っていうのがお節句の飾りでも流行りました。着用兜は玩具のようなものですが、それを本物っぽくした作りです。一般に販売されている着用兜は、文字通りお子様の「着用」にこしらえられているので、節句のしつらえには本来向いていません。あくまでお子様のコスプレ用です。お子様がかぶってもいいように安全で軽く、かぶった姿はとてもかわいいものです。着用兜をお求めになる方は、それとは別にお節句用の鎧兜もご用意いただくことをお勧めします。

 節句飾りは、「厄除け」「お守り」として「祈り」の対象になりうるかどうかがおもちゃと根本的に異なる点です。着用兜はあくまで「着用」であって、本来ならばお節句の兜をご用意していただいた上で、それとは別にコスプレ用にお求めいただく兜です。もちろん、実際にかぶれるような大きさのちゃんとしたお節句用の鎧・兜もあります。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

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