甲冑 兜 ~その十一~
唐獅子 ②
神社の柱の唐獅子(右は獏、左は龍)
「唐獅子」の意味は、「唐(中国七~九世紀ごろ)の国のライオン」ですが、中国にライオンはいません。
唐の時代はインドから伝来された仏教がさかんになっていて、僧を中心にインドと行き来が多い時代でした。そのインドには「インドライオン」がいるのです。姿かたちはアフリカのライオンとそっくりですが、やや小ぶりです。頻繁な行き来の中で、僧侶やその周辺の商人たちがインドライオンを中国に持ち込んだものと思います。仏教とライオンが関係あるのかといわれれば、あるのです。文殊菩薩が乗っているのが獅子(ライオン)なのです。
文殊菩薩と言えば、私などには「三人寄れば文殊の知恵」くらいしか思い浮かびませんが、最澄とともに日本で最初に大師号を与えられた慈覚大師(円仁)が伝えた大乗仏教の象徴でもあります。慈覚大師は、九世紀に苦難の末に唐にわたり修行をおさめた方で、弘法大師より少しお若いですが先に大師号を得られました。最澄、弘法大師にくらべ人口にのぼることの少ない方ですが、あのライシャワー博士によって詳細な研究がなされて戦後は評価が高まっています。ライシャワー博士はご存知のように米国の駐日大使を務められた方ですが、日本の国文学者でも手を焼く難解で膨大な漢文による慈覚大師の日記「入唐求法巡礼行記(にっとうぐほうじゅんれいこうき)」を解読し、解説しています。この中に、道でライオンに出くわしたお話が出てきます。この旅行記は世界三大旅行記のひとつになっています。他のふたつは、「大唐西域記(例の三蔵法師のお話)」、「東方見聞録(ご存知マルコポーロ)」です。
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