黄櫨染という装束の男雛です。即位の礼などで天皇がお召しになる装束です。この織柄は桐竹鳳凰麒麟文の筥形といって、麒麟は竹林に住むと言われ、鳳凰は桐の実を食むというところから採られた格式の高い柄です。上に二羽飛んでいるのが鳳凰、下の方に分かりにくいですが麒麟がいます。
この柄には当然、上下があります。上の写真は前から見たところで、鳳凰が上にいますが、普通に織られた裂地(きじ・おりもの)だと、後ろ側は柄がさかさまになってしまいます。ところが、このお雛さまは、後ろから見てもちゃんと鳳凰が上に来るように織られた裂地を使ってこしらえられています(下の写真)。ごくわずかですが、このようなところまで意識して作ってもらいます。
また、首のところに白い糸で?がありますが、これは高倉流の装束で、山科流で+になっているものもあります。襟口をとめる「とんぼ」というボタンにあたるものをこれでとめてあります。
まさに重箱のスミ中のスミのお話。職人と取り扱う者の単なるこだわりです。