あけましておめでとうございます。
新年早々大きな災害が起きてしまいましたが、どうかこれで打ち止めにしてほしいものです。
一日も早く災害に遭われた方々の平穏な日常を取り戻されることを祈ります。
「踏まえます俵の米の数よりも 幸多かれと神やまつれる」千家尊福
皆さまに幸多い年でありますように。
※尊福は、出雲大社の元宮司、政治家ですが、「年の始めのためしとて~」のお正月のうたを作詞した人でもあります。
お雛さま売り出し中です。
お雛さまに大切なのは、一も二もなく「品(ひん)のいいこと」です。どうしても赤ちゃんのときに求められることが多いので、「かわいい」に引っ張られてしまうのですが、そもそも、可愛らしくないお雛さまはありません。
お雛さまは、お嬢様が一生の間ひな祭りのときに飾り、祝うもの、100年間飾れることが必須条件です。そのためには「流行に左右されないこと」「ちゃんとした素材、技術で作られていること」など多くのハードルがありますが、中には5年か10年もてばいいと考えるお店やお客様もいらっしゃって、結果的に数年後に粗大ごみとなってしまうことがふえています。
お店お店の考え方で、扱うお雛さまや雛道具はまったく違ってきます。そんな悲しくももったいないことにならないよう、ちゃんとした考え方のお店を選ばれることがことがお雛さま選びよりも大切かもしれません。
当店のお雛さま~多少のこだわり~
〇 刺繍や金彩の入った装束のお雛さまは当店にはほとんどありません。装束の基本は「唐織」または「錦織」だからです。「絞り」や「友禅」、まして「紬」などはお雛さまの装束としてはありえません。高級品ではそれが「正絹」になりますが、総正絹のお雛さまというのは、木目込人形以外ではほとんどありません。仮に「正絹」と表示されているお雛さまでも、下着や袴まですべて絹というお雛さまはほとんどなく、当店でも最高級品にあたる数点のお雛さまに限られます。※木目込人形は、使われる裂地の枚数も面積も着付け雛に比べると極めて少なくてすむので、総正絹で作ることが容易です。
〇 「屏風」は面積が大きいので、お雛さまの雰囲気に大きく影響します。当店ではほとんどが「表装」された唐紙の屏風です。多くのお店様では、ベニヤ板やMDFという合板に木目を貼り付けたり、プリントや布を貼り付けたものを金属のチョウツガイでつないだものになりますが、屏風というのは、本来「表具師」がひとつずつ仕立てるもので、木ネジで留めるものではありません。手漉きの紙や、雲母を用いた手摺りの唐紙の屏風はそれ自体も上品で美しく、前にあるお雛さまを引き立たせてくれます。
〇 「親王台」という、お雛さまが座っている台があります。畳張りで、前後に「繧繝縁(うんげんべり)」という綺麗な布が貼られています。この繧繝縁こそが、その上にある人形の格を表すもので、源氏物語絵巻などでは人の姿を描かず、この畳のへりを描くだけでそこに誰がいるのかわかるようになっています。木目込人形のような創作人形的なものには畳や繧繝縁を用いないことがありますが、衣裳着の、特に実際の装束に即したお雛様(有職雛系)に「板」の台を用いることがふえてきました。位の低い人は畳に座ることができません。まして、繧繝縁はなおさらです。有職雛系のお雛さまに板の親王台はプロの目から見ると、異様でもあります。そして、その畳に今はほとんどが「和紙畳」と称する黄色い畳が用いられています。この「和紙」とは、コウゾミツマタなどではなく、パルプに樹脂を混ぜたもので、一般の方の思っている「和紙」とはまったく違うものです。できれば、美しいイ草の畳の親王台を用いたいものです。
〇 その他、当店では人形や雛道具のひとつひとつに「ふるい」をかけています。それは、ひとりよがりの思い込みかもしれませんが、すべて、お客様に対しての当店の良心と思っていただければ幸いです。