ゴールデンウイークが始まりました。ご家庭では端午の節句のご準備もおすみでしょうか。スーパーにはお風呂に入れる菖蒲や、お菓子屋さんにはチマキや柏餅もならんでいます。
どうぞ楽しいお節句を!
連載 重箱のスミ ②
お内裏様の着物(袍)の柄 その一
男雛の着ている装束は一般的には束帯(そくたい)といわれるもので、その一番上に着ている袍(ほう)という着物に黄色いのがときどきあります。即位の礼で天皇がお召しになられたもので、黄櫨染(こうろぜん)というものです。これには長方形の文様が織り出されており、「桐竹鳳凰麒麟文(きりたけほうおうきりんもん)の筥形(はこがた)」と呼ばれています。
鳳凰は竹林に住み、桐の実をついばみ、聖人が国を平和に治めているときに姿を表すという伝説の鳥で、極めて格式の高い文様です。
麒麟はビール会社のラベルでおなじみですが、やはり、聖なる王が理想的な統治を実現している時に現れるとされる聖獣です。
上に二羽飛んでいるのが鳳凰、下の方に分かりにくいですが麒麟がいます。真ん中に竹林と桐が織りだされていますが、この柄には当然上下があります。左の写真は前から見たところで、鳳凰が上にいますが、普通に織られた裂地(きじ)(※)だと、後ろ側は文様がさかさまになってしまいます。ところが、このお雛さまは、後ろから見てもちゃんと鳳凰が上になるように織られた裂地を使ってこしらえられています(右の写真)。つまり、肩の部分を頂点に上下を逆さ向きに文様が織られているのです。ごくわずかですが、このようなところまで意識して作られているお雛さまもあります。
(※)裂地:「きれじ」と一般には読みますが、人形の衣装に使う布の場合には「きじ」という場合が多い。掛軸の表装や茶道の帛紗・仕覆などの場合にも「裂地」をもちいます。。
この桐、竹、鳳凰、麒麟が四角にまとめられたものを筥形、全体に散らばっているものを乱桐竹鳳凰文(みだれきりたけほうおうもん)と呼んだりします。
また、首の右前のところに白い糸で☓がありますが、これは高倉流の着付けの装束で、山科流ではこれが+になります。襟口をとめる「とんぼ」というボタンにあたるものをこれでとめてあります。このとんぼやその受け緒は実際の装束では袍と同じ裂地で仕立てられます。 ーつづくー
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