連載 重箱のスミ ④
お内裏様の着物(袍)の柄 その三
男雛に黒い装束のものがあります。特に江戸末期~明治頃の古いものに多く見られます。この装束の柄には「轡(くつわ)」文がよく用いられています。馬を制御するために口にはめ、手綱をつける金具を文様にしたものです。最近のお雛さまでは、ときどき、この黒い装束に立涌(たてわく)文が織り出されていることがあります。黒い束帯は三位(さんみ)の装束で天皇がお召しになることはありません。一方、立涌文は天皇しか身につけることのできない文様ですので、黒い袍にこの文様があるのはおかしいことになります。でも、そこは人形なのでご容赦をいただきたいところです。この後も「人形なので」という言い訳はたびたび出てきますがお許しを。
後にも触れますが、冠の後ろについている纓(えい)という羽根のようなものがありますが、ピンと立った立纓(りゅうえい)は帝しかつけることができません。お雛様には多くの場合、衣装に関わらずこの立纓がつけられますが、この衣装のときは本当なら下に垂れた垂纓(すいえい)でなければなりません。これも「人形なので」のひとつです。 ーつづくー
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