女雛 ~その三~
裳(も) の一
※何度も繰り返しますが、今回の裳のことも、このように作られていれば良い人形というわけではありません。
女雛の後ろ側の腰にまとっている白いエプロンのようなもの、これを「裳(も)」といいます。人形業界では「裳裾(もすそ)」、「裳袴(もばかま)」ということもあります。
雛人形の女雛は通常十二単と呼ばれる衣裳を着ていますが、現代の装束の世界では「五つ衣(いつつぎぬ)、唐衣(からぎぬ・からころも)、裳(も)」と呼ばれています。簡単に説明すれば、神社の巫女(みこ)さんが着ているような白い小袖の着物に赤い袴、その上に丈の長い打掛のような衣を何枚も着重ねます。その内訳は、最初に単(ひとえ)という一枚物、そして、袷(あわせ)の五つ衣(五枚の衣)、表衣(うわぎ)、更に、丈の短い唐衣、最後に裳の順です。単と表着の間に衵(あこめ)という衣を重ねることもあります。
「衣裳」という言葉はこの衣と裳の構造からきています。現代の服装(洋服)では裳がないのに衣裳とはこれいかに、ということになり、「衣装」という語に置き換えることになりました。
源氏物語絵巻などを見ると、女性は多くの場合この唐衣や裳をつけていない姿で描かれています。普段は、唐衣や裳をつけない状態で暮らしていたのです。この状態では五つ衣や表衣をまとめる帯はなく、小袖・袴の上に打掛のようにまとっているだけの姿です。改まった場合に唐衣や裳を付け、裳に付いている帯ではじめて衣裳を前で結びまとめることができるのです。裳と唐衣はこのように常にセットで用いられるため、裳についている帯は唐衣と同じ裂地(きじ)が用いられます。ですから、前から見ると唐衣の帯のように見えることになります。 ~つづく~
「裳」八枚の裂地でできていて、美しい四つの畝(ドレープ)とほっそりしたウェストが表現できます。髪を結ぶ水引も⑯のように、二本目は赤、以下の三本は白になっています。
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