連載 重箱のスミ ㉓

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女雛 その八

  裳(も) ~六~

 裳には帯(紐)が何本か付いていますが、小紐は近世になって付けられたもので、装束を着て裳をつけて衣裳をまとめるとき、まずこの紐で結びます。形を整えて、小腰(こごし)という裏も表も唐衣と同じ裂地でできている帯を前で結び、余りを垂らします。結ぶときにどうしても一部裏側が出ますので、裏表同じ裂地でこしらえた方が見た目がきれいだからでしょう。同じ裂地を使うので唐衣についている帯と思われがちですが、この帯は裳についていますので、唐衣と裳は常にセットで用いられることがわかります。

 さらに、引腰(ひきごし)というよくわからない飾り紐が二本ついています。これは、現代では後ろへ裳の上に垂らしています。この引腰は中世以前にはなかったとされていますが、室町時代頃に、この引腰を肩から前にわたして胸の辺りで結び、裳を肩から下げるようにつけた、その名残りと言われています。懸帯(かけおび)と呼ばれるもので、今でも胸の前でこの懸帯を結んだ雛人形を見ることがあります。しかし、肩から掛けるにしても帯で結んでおかないと、裳がずり落ちると懸帯がのどにひっかってしまいそうで、この説についてはちょっと疑いが残ります。(図)

 中国や韓国の時代劇を観ると、王様に仕える女性たちがふわふわとした細長い布を肩からかけていることがあります。おとぎ話の乙姫様たちもよくこのふわふわした布を肩にかけています。これは、本当かウソかわかりませんが、王様が食事のときにハエがたからないようにおそばでこの布を振り回すためだそうです。このふわふわの布が後に懸帯に発展したという説をなにかで読んだことがあります。なるほど、ありそうな話ではあります。韓国の映画で、この布を武器にして戦う女性の姿もありましたね。

懸帯のついた女雛。きれいな刺繍入り。

 

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