連載 重箱のスミ ㉛

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女雛 その十六

 単(ひとえ)のひねり

  ひねる!
写真の衣装の単(女雛の緑色の部分、男雛のオレンジ色の部分)は周縁が全部コヨリのように丸めてあります。これをヒネリといいます。上着(五つ衣や表着)の裾は床に引きずるように長くなっていますので、どうしても傷みます。そこで、その下に着る単を上の衣より一回り大きく作り、五つ衣などの上着が直接床に接しないようにしています。単は、裏のついていない、一枚の布を縫って仕立てた簡単なつくりの衣です。

 この単の衣は端っこにうすく糊を付けてひねられ、その部分がすり切れたりすれば、また少しずつひねることができます。単の衣装は、この、すその部分だけではなく袖、襟もとなど周縁すべてがこのようにひねられています。江戸時代のころのお雛さまは、男雛・女雛だけでなくその他のお供の人形たち(官女、五人囃子や随身など)も同様になっています。

 このヒネリ、簡単そうですがけっこう大変な作業で、単を仕立てた後、少しずつ糊をつけて丸めていきます。特に角のところは丸くならないように慎重にしなければなりません。

 ひねることによって周縁が固くなりますので、折って縫うよりも装束の形を美しく整えることができます。徳川美術館に展示されている雛人形の多くはこのように仕立てられており、かつては普通にこの方法で仕立てられていたことがわかります。実際の装束がそうなっているので、そのように作られているだけなのです。

現代でも一部のお雛さまでこうしたつくりを見ることができます。

女雛の裾の裏側            男雛の袖口

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

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