連載 重箱のスミ ㉜

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五人囃子 その一

 〇五人囃子の袖

 着物の「小袖」と「大袖」の違い。なんとなく、小さい袖が小袖で、振袖のような大きな袖が大袖と思いがちですが、実は、袖の大きさには関係なく、手の出るところが小さく開いているのが「小袖」で、女雛の十二単のように手の出る部分が縫われていなくて大きく開いているのが「大袖」なのです。

 いま、五人囃子の袖はほとんどが袖口がひらいている「大袖」になっています。本来ならば、手の出るところから下は縫いとじられていなければならないのですが、下着が見えるようにできています。これは、平成の始めのころに現れた作りで、一見、下着のかさねが見えてきれいなような気がしますが、実はこの作り方の方が直線縫いだけでできるので簡単ということらしいのです。

 本来ならば、手の出るところの下は後ろに向かって丸く縫われていなければならないのですが、これがなかなか手間がかかります。昭和以前の五人囃子には今のような袖のひらいたものはありません。これは、そういうものだからです。新しいお雛さまで、小袖の作りになっている五人囃子をお持ちでしたら、それはかなり良いお雛さまかもしれません。

 また、最近ときどき見かけるのが、腰の左側に脇差(小刀)が差し込まれていない五人囃子です。さらには、脇差が下に置いてあるものもあります。飾り方説明書にそう書かれているものも見たことがあります。人形なので、きれいとか可愛い、ということである程度のことは許されるとは思っていますが、理由のない単なる手抜きか無知である場合には責められてもいいと思います。人形の着付師は脇差を差し込みやすいように袴を作るか、最初から脇差をつけておく必要があります。切腹のときには座った前に脇差が置かれ、抜いた鞘を後ろに置いて腹を切ります。縁起でもありません。

袖の前部分が縫われていません。   縫われています。

 

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