連載 重箱のスミ㊲

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「屏風」をほじくる  その一

  六曲一双屏風

[ 屏風 ]  基本的な構造は、矩形の木枠の骨格に用紙または用布を貼ったもので、この細長いパネルを一扇といい、それに向かって右から第一扇、第二扇と数える。これを接続したものが屏風の一単位、一隻(一畳、一帖)である。:wikipediaより

 お雛さまの屏風の基本は一本が六つの面(扇)でできており、折りたたむことができるようになったものが二本(二隻)一組になったものです。先の鳥毛立女屏風もこの六曲であったように、また、現代でも結婚式で新郎新婦の後ろに立てられる金屏風がそうであるように、それが基本なのです。(写真)

 作りは、障子のような骨が組まれた下地に裏表両面から紙を貼り重ね、つなぎ目は「紙蝶番(かみちょうばん)」という独特な技法で自在に三百六十度曲げることができるようになっています。当然、中は空洞です。紙の部分を強く持つと破れます。

 童謡「うれしいひなまつり」では「金の屏風にうつる灯を~」とありますが、金だけではなく絵が描かれたものもよく用いられます。お雛様の背後に屏風の縦の折り目ラインが何本も入りますので、荘厳さが増すように感じます。そして、見逃せないのは、三曲の屏風と違って左右に大きな袖がないので、雪洞(ぼんぼり)を置くのに不自由がない点です。

 今では飾る場所のスペースの問題もあって三曲の屏風が主流になってしまいましたが、どうしても簡略化の印象はぬぐえません。そして、今一つの問題は、この三曲屏風の多くがつなぎ目を金属のチョウツガイで木ネジで留めて作られていることです。つまり、屏風なのに、表具がされていないのです。合板(ベニヤ)やボード(MDF)に花柄や風景を印刷したり、布や木目シートを貼りつけてできています。表具師ではなく、木工屋さんで主に作られます。表具、表装という伝統的な技術職の職人が激減していく原因のひとつにもなっています。合板やボードの屏風があってもいいのですが、基本となる表具をされた屏風を人形販売店が極端に扱わなくなってしまったことが大きな原因といってもいいでしょう。

 親王台のところでも触れましたが、SDG’s的(環境)にも大きな問題があります。屏風や台でよく用いられる「木製のような板」のほとんどは「合板」か「ボード」の「木質材」といわれるもので、木材のシートやチップを接着剤で圧縮成形したものですから、廃棄しても簡単に自然に戻らず、焼却するのもガスなどの問題で容易ではありません。海洋汚染の原因のひとつにも指摘されています。きれいな木目の、一見、木製のような材料もほとんどが合板やボードに木目シートを貼り付けたもので、販売店自身も「木製」と信じて販売していることが一層の環境悪化に加担している結果になってしまっています。実際、そうした製品の多くに「木製品」の表示がなされています。家具や食器などではありえない表示です。(残念ながら、現在のところ雛人形などにきちんとした素材表示義務はありません。)

 そして、こうした商品がふえることで従来の「表具師」がこしらえる屏風が消えていくことに私たちは注目しなければなりません。

 

六曲の屏風。              屏風の骨組み。これに和紙を貼り重ねます。

これは絵師が源氏物語を描いています。

 

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これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

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