連載 重箱のスミ ㊺

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

雛人形売り出し中

 お雛さまには「様式」とそれにまつわる「お話」があります。

お雛道具揃と掛盤膳揃 ~その二~

 「掛盤膳揃付」って?

 

七段飾りのお雛さまをお持ちの方は、お道具の入っている箱を見ていただくと「掛盤膳揃付(かけばんぜんぞろいつき)」とたいてい書いてあります。この「掛盤膳揃」とは、前述の足のついた四角い掛盤膳と三方、菱餅、高杯(たかつき・丸餅)のことを指しています。「掛盤膳揃付」とわざわざ断ってあるということは、「掛盤膳揃なし」があったということです。そうなんです。当家にもあるように、掛盤膳や三方などは、かつては多くのお宅でお節句用に常備されていたので、お雛さまを揃える時に買い求める必要がなかったのです。ひな祭りは節句なので、新しく生まれた女の子のためだけにするのではなく、毎年、どこのお宅でもお祝いをするのでお供えのお道具は常備されていたのです。

また、重箱も同じです。かつてはどこのおたくにも重箱があったので、それを用いていました。では、掛盤膳揃以外の残りの御道具類をなんと呼ぶかというと、「嫁入り道具」といいます。つまり、タンス、長持、挟み箱、鏡台、針箱、火鉢、茶道具、布団袋、重箱。牛車(ぎっしゃ)、お駕籠(かご)などのことです。(昭和四十年代ころまでは牛車には黒い牛がついていました。今は、この牛を作る職人がいなくなり、牛のついた牛車を見ることはなくなってしまいました。よって、最近では牛車と呼ばず御所車というようになりました。)まさに、お大名のお姫様が嫁入りのときに持参したお道具のミニチュアだったわけです。手の込んだお道具ですと、タンスや鏡台、針箱のひきだしの中に、細かなお道具が入っていました。小さな着物や、小指の先ほどの櫛、ほんとうに切れる超ミニのハサミ、お化粧道具など大人が見ても胸躍るような細工物です。さらに、お歯黒などのお化粧道具や将棋盤、碁盤、双六盤、几帳に衣紋掛などおびただしいお道具類がありました。ご注文をいただくことがなくなって久しく、いま、ご注文いただいても果たして同じようなものができるかどうか、自信がありません。

七段飾りのお雛道具揃。「掛盤膳揃付」の表示。

右上には「木製品 日本製」の表示も。なんだか不思議です。

タンスや針箱の引出しの中の超ミニサイズのお道具。

上のクシの幅は1センチほどです。ワクワク💛

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。