大西人形本店

当店の五月人形についての考え方

●五月人形はおもちゃやクリスマスツリーなどの飾り物ではありません。節句をお祝いするお道具であり、調度品です。五十年、百年と飾っていただけるものをお選び下さい。
●お飾りになるお部屋の家具や調度品との釣り合いを考えてください。これは販売員にはできない作業です。
●鎧、兜、大将など、中心になる本体が一番大切です。まず本体をお選びいただき、それに合う屏風や台をお部屋の雰囲気と重ねてお考えください。
●大きさや価格はもちろん大切です。ご希望の範囲内でできる限りご納得のいただけるよう、どんなご質問にもお応えします。五月人形を買われるのは、ほとんどの方が初めての経験です。なにもご存じなくて当たり前、質問して恥ずかしいことは何一つありません。

五月人形についての詳しいご説明

端午の節句とは?
 「端午の節句というと、勇ましい鎧兜や鯉のぼりを想像される方が多いのですが、昔から日本に伝わる端午の節句はずいぶん様子が違っていたようです。
万葉集の中でも最も有名な歌のひとつに『茜さす紫野ゆき標野ゆき 野守は見ずや君が袖振る』(額田王)という歌があります。
7世紀頃のことなのですが、五月五日は「薬狩り」の行事の日で、大海人皇子が「御猟(みかり)」に出かけ、額田王(ぬかたのおおきみ)が標野(しめの・薬草を育てるための領地)に薬草を採りに行くそのわずかな別れのときに、皇子はあんなに大げさに手を振って、人に見られたら恥ずかしいじゃないの、と詠んだものです。

 大海人皇子はツノから薬をとるために鹿狩り、額田王は紫草や菖蒲、ヨモギを採りに行ったようです。また、庶民はヨモギや菖蒲を周囲や屋根に飾った家に女たちが集まり、これから始まる過酷な田植えなどの農作業の無事を祈り、精進潔斎をしたそうです。これを「忌み籠もり」といって同じ五月五日に行ったのですが、実際は飲んで歌っての厄落としだったようです。


 当時は太陰暦ですので、5月5日は6月の初旬~中旬、そろそろ夏に向かって暑くなり食べ物が腐りやすく病気もはやり始めるころで、田植えなど農作業が始まる時期と重なり、豊作、疫病除けなどの祈願のため五つの節句の中で最も重要な節句行事だったそうです。
また、昭和初期くらいまで端午の節句に鎧を着た女性のお人形がよく飾られました。これは神功皇后で、隣には必ず赤ちゃんを抱いたひげのおじいさんー武内宿彌(たけのうちのすくね)ーが控えています。旦那さんは仲哀天皇で好戦的な方ではなかったようで、代わり皇后がクマソや新羅征伐にでかけたそうです。赤ちゃんは応神天皇です。

 このように、端午の節句は女性と密接なつながりのあるお節句だったのですが、戦国時代から江戸時代になると武家が大きな幟(のぼり)を建てるようになり、室内には鎧や兜を飾るようになりました。この風習が商人たちにも広がり、江戸時代も後期になると鯉のぼり(当時は鯉の吹き流し)も現れ、競うように通りの両側に幟や旗が並び建てられるようになったのです。
江戸時代は完全な男系社会でしたので、男の子が誕生すると世間に広める意味もあり、大きな幟や鯉の吹き流しを揚げたのでした。
これが、「端午の節句は男の子の節句」となった始まりです。

 古代と近世では大きく意味も変わった感のある端午の節句ですが、共通するのは 無事や健康を祈る「厄除け」「厄払い」です。兜や人形は「厄」を肩代わりしてもらう形代(かたしろ)で、お子様が無事に立派に育ってほしいという願いはいつの時代も変わらないものです。
鎧、兜
 鎧・兜は、初めてご覧になる方でも割とわかりやすい商品です。お店の人がどんなに一生懸命説明してくれても何か安っぽい感じがしたり、良さそうだなと思ったらやはり高額だったりと、見た目である程度判断ができるものです。ご自分の目を信じてください。あとはデザインや色・柄などですが、最近は特に変わったかたちの流行商品が多くなりました。はやっているものがなぜいけないのか?と言われる方もいらっしゃいますが、当店ではお節句のお飾りはおもちゃやクリスマスツリーの仲間ではなく、工芸品や調度品の仲間だと考えているからです。

つまり、小さな子供の間だけ飾るのではなく、大人になっても、おじいさんになっても飾れるもの、と考えていますので5~6年も経ったら流行遅れで見るのもいやになってしまうようなものでは困るからです。 また、テレビドラマなどの影響で主人公の鎧兜をお探しの方もいらっしゃいます。 当店ではこうした「名将兜」はあまりお勧めしていません。
それは、名将といわれる人々に平穏に長生きされた方は少ないですし、その武将にやっつけられた側の方々にとってみればご先祖の憎き仇ともいえるからです。
もちろん、その武将を尊敬しているからとか、その末裔の方なら良いのですが、そうでなければあまり「誰々の兜」というものではなく、そのお子さまの兜を新調するつもりで新しい兜をお求めいただくことをお勧めします。
鎧段飾り

鎧段飾り

陣屋提灯、太鼓、三宝などを三段に飾った、五月人形のフルセットです。節句のお祝いもいやが上にも盛り上がります。 更に、飾馬や両幟などを加えると一層豪華です。40万円程より各種。兜や大将でも同様に飾れます。写真のお飾りは平安武久作大鎧 約70万円
幅90cm×奥行88cm×高さ160cm

鎧床飾り

鎧床飾り

鎧を屏風と台でシンプルに飾りました。上品な屏風で飾ると、鎧が一層引き立ちます。
30万円程より各種。写真のお飾りは平安武久作大鎧 約40万円
幅88cm×奥行45cm×高さ80cm

兜床飾り

兜床飾り

兜は飾り方がシンプルなため、屏風・台の組み合わせ方でとても上品な美しいお飾りになります。兜により15~6万円より。
写真のお飾りは、粟田口清信作 約50万円
幅90cm×奥行45cm×高さ65cm

兜床飾り

兜床飾り

小ぶりな兜を縁起物の五色幕の屏風に飾りました。短檠(たんけい)が上品です。
写真のお飾りは粟田口義房作 約43万円
幅82cm×奥行42cm×高さ55cm

大将、人形
 古くから「かたしろ」としてお節句に人形類を飾ることは多く見られます。鎧を着た大将や、金太郎、桃太郎、鍾馗や弁慶などお祝いに贈られたり、お父さまやおじいさまのお人形を出して飾るのもにぎやかで良いものです。
かたしろとは、お子様の身代わりにお人形が災厄を引き受けるというもので、中でも怖いお顔の鍾馗や弁慶は災厄そのものを追い払うという意味で、お節句のお飾りには欠かせないお人形です。若いお母さんの中には「怖いからいや」という方もいらっしゃいますが、鍾馗や弁慶は怖くないと意味がありません。また、馬や虎の飾りも縁起物として今でもよく贈られます。
若殿

若殿

将や若殿のお人形飾りは可愛らしく上品です。昔風に真菰(まこも)で飾りました。床の間に飾っていただくととても良い節句飾りです。お人形や飾り方によって5~6万円ほどからお組みできます
写真は小西清甫作 約50万円
幅88cm×奥行45cm×高さ80cm

皐月の風

皐月の風

木目込のお人形飾りです。五月の野山に吹き渡る風が爽やかです。

お人形や飾り方によって5~6万円ほどからお組みできます。
写真は玉泉作 6万5千円
幅45cm×奥行30cm×高さ40cm

大将飾り

大将飾り

勇ましい鎧着の大将飾りです。可愛いお顔にきれいな鎧でリビングなどにぴったりのお飾りです。お人形や飾り方によって5~6万円ほどからお組みできます。
写真のお飾りは松崎幸一光作 約19万円
幅65cm×奥行35cm×高さ45cmm

屏風・台
 鎧や兜に合うことが大切です。そして、飾るお部屋の雰囲気に合うかどうか。屏風や台がやたらに立派に見えるものがありますが、端午の節句は屏風や台を飾るのではありません。一般にはベニヤ板やボードに絵が描かれたり刺繍が施されたりしたものが多いのですが、和紙の本表装の屏風は流行もなく、長い間飾ることができ修理もしやすくなっています。上品で、大人になってもお節句に飾ろうという気持ちを持ち続けられるものをお選びいただきたいと思います。
鯉のぼり、武者絵幟(のぼり)
 かつては、むしろこの幟の方が端午の節句の飾りの本筋でした。最近は建てる場所の関係で少なくなりましたが、できればお飾りいただきたいものです。お子様もとても喜ばれます。
飾り方
 鎧にせよ兜にせよ屏風や台でこう飾らなければならない、ということはありません。床の間の掛け軸の前に兜だけを飾っても良いですし、鎧を段飾りで太鼓やかがり火、お三方などとともに飾ればとても豪華です。また、今はマンションにお住まいでも数年先に一戸建てに移られる予定の方など、現在の状況に合わせてあまり小さなものをお求めになると、後で困ることもあります。そのような場合、とりあえず中心の兜だけをお求めいただき、後で屏風やお道具などを揃えることもできます。
お住まいの地域の風習や、お家の考え方などで飾り方もまちまちです。ご遠慮なくご相談下さい。